【新事業進出促進補助金】賃上げ要件について解説!

中小企業新事業進出促進補助金は、中小企業が既存事業とは異なる新たな分野へ挑戦し、企業規模の拡大や付加価値向上を通じて生産性向上を図り、最終的に「賃上げ」へとつなげていくことを目的としています。

この補助金を申請するにあたり、特に注目すべきが「賃上げ要件」です。過去の補助金(例えば、事業再構築補助金)では賃上げが必須ではないケースもありましたが、本補助金ではこの要件が必須であり、未達の場合には補助金の返還義務が生じるという、より厳格な内容となっています。

賃上げ要件の概要と厳しさ

中小企業新事業進出促進補助金における賃上げ要件は、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うことを求めています。

  • 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる。
  • 給与支給総額の年平均成長率2.5%以上増加させる。

これらの目標値は、申請者自身で設定し、応募申請時までに全ての従業員または従業員代表者に対して表明することが求められます。

そして、この要件の厳しさは、未達時の措置に明確に表れています。

  • 目標値の従業員等への表明がされていなかった場合、交付決定が取り消され、補助金全額の返還が求められます。
  • 事業計画期間最終年度において、設定した目標値のいずれも達成できなかった場合、補助金交付額に未達成率を乗じた額の返還が求められます。特に、年平均成長率がゼロまたはマイナス成長であった場合は、全額返還となります。
  • さらに、補助上限額の引き上げを受けられる「賃上げ特例要件」を適用した場合、この特例要件を達成できなかった際には、賃上げ特例適用による補助上限額引上げ分の全額返還を求められます。

このように、単なる目標設定だけでなく、その実行と達成に対して明確な責任が伴う点が、本補助金の賃上げ要件の最大の特徴であり、慎重な計画立案が不可欠です。

上昇する最低賃金と補助金活用の戦略的意義

一方で、この賃上げ要件は、昨今の社会情勢と照らし合わせると、企業にとって戦略的な機会とも捉えられます。
ご認識の通り、日本では全国的に最低賃金が年々上昇傾向にあります。
これは、企業が従業員の給与水準を継続的に見直す必要があり、賃上げが避けられない経営課題となることを意味します。

このような状況において、中小企業新事業進出促進補助金を活用する意義は大きいです。

  1. 賃上げコストの一部補填: 補助金を受給することで、新規事業への投資と同時に発生する賃上げコストの一部を補助金で賄うことが可能になります。これにより、自社の持ち出しを抑えつつ、従業員の待遇改善を図ることができます。
  2. 生産性向上と賃上げの連動: 補助金の目的が生産性向上と賃上げの連動にあるため、新規事業による売上・付加価値向上と従業員の賃上げを一体として計画することで、持続的な成長サイクルを構築できます。
  3. 審査での評価向上: 賃上げ要件において、基準値を上回る高い目標値を設定し、その実現可能性を具体的に示すことは、審査において高く評価されます。これは、採択の可能性を高める重要な要素です。
  4. 企業価値の向上: 計画的な賃上げは、従業員のモチベーション向上、優秀な人材の確保・定着、企業イメージの向上にもつながり、中長期的な企業価値の向上に貢献します。

まとめ

中小企業新事業進出促進補助金の「賃上げ要件」は、未達成時の返還義務を伴う厳しいものですが、変化する経済環境の中で企業が成長を続けるためには、賃上げは避けて通れない課題です。

この補助金は、攻めの姿勢で新規事業に挑戦し、事業拡大と生産性向上を通じて計画的に賃上げを実行する企業にとって、非常に有効な支援策となり得ます。
賃上げの必要性が高まる今こそ、本補助金を戦略的に活用し、企業の持続的な成長と社会への貢献を目指しましょう。