中小企業新事業進出促進補助金とは?目的・対象者等を徹底解説!
補助金の目的
中小企業新事業進出促進補助金は、中小企業などが行う、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦を支援することを目的としています。具体的には、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業などが企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、最終的には賃上げにつなげていくことを目指しています。
補助対象事業の概要
この補助金は、中小企業などが以下の要件を満たす3~5年の事業計画に取り組むことが必要とされます。
- 新事業進出要件: 事業者が新たに製造・提供する製品などが新規性を有し、その属する市場が既存事業の市場とは異なる新たな市場であること。また、事業計画期間の最終年度において、新規事業の売上高または付加価値額が、応募申請時の総売上高の10%または総付加価値額の15%以上を占める見込みである必要があります。
- 付加価値額要件: 事業計画期間において、付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みであること。
- 賃上げ要件: 事業計画期間において、従業員一人当たり給与支給総額または給与支給総額の年平均成長率が、一定水準以上増加する見込みであること。これらの目標が未達成の場合、補助金の返還義務が生じる可能性があります。
- 事業場内最低賃金水準要件: 事業計画期間中、毎年、事業所内最低賃金(補助事業を実施する事業所内で最も低い賃金)が、補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。これも未達成の場合、補助金返還の対象となる可能性があります。
- ワークライフバランス要件: 「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」に公表していること。
- 金融機関要件: 補助事業の実施にあたり金融機関などから資金提供を受ける場合、資金提供元の金融機関などから事業計画の確認を受けていること。
- 賃上げ特例要件(追加要件): 補助上限額の引き上げを希望する場合、補助事業実施期間内に給与支給総額を年平均6.0%以上増加させ、かつ事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げることが求められます。この要件が未達成の場合、引上げ分の補助金交付額の全額返還を求められます。
補助対象経費は多岐にわたりますが、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須であり、これらの経費が補助対象経費の大部分を占める必要があります。
どんな企業が対象?補助対象者を徹底解説
本補助金の補助対象者は、日本国内に本社および補助事業実施場所を有する事業者に限られます。具体的には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 中小企業者
- 「中小企業者など」に含まれる「中小企業者」以外の法人
- 特定事業者の一部
- 対象リース会社(共同申請の場合)
中小企業者の定義
「中小企業者」に該当するためには、以下の資本金または常勤従業員数のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 製造業、建設業、運輸業: 資本金3億円以下 または 常勤従業員数300人以下
- 卸売業: 資本金1億円以下 または 常勤従業員数100人以下
- サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く): 資本金5,000万円以下 または 常勤従業員数100人以下
- 小売業: 資本金5,000万円以下 または 常勤従業員数50人以下
- その他の業種: 資本金3億円以下 または 常勤従業員数300人以下
「みなし大企業」は対象外
上記の中小企業者の定義を満たしていても、以下のいずれかに該当する場合は「みなし大企業」とみなされ、補助対象外となります。
- 発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者など。
- 発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者など。
- 大企業の役員または職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者など。
- その他、上記に該当する中小企業者が所有している場合など、実質的に大企業に支配されていると見なされる場合。
また、補助金の対象者となることのみを目的として、資本金や従業員数を一時的に変更することも認められていません。
他の補助金との重複申請と注意点
以下の補助金について、申請締切日を起点に16か月以内に採択を受けている、または申請締切日時点で補助事業実施中の事業者は、本補助金の対象外となります。
- 中小企業新事業進出促進補助金
- 中小企業等事業再構築促進補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
複数の補助金に同時期に応募申請することは可能ですが、複数採択された場合は、交付を受ける補助金を1つだけ選択して交付申請を行う必要があります。選択せずに複数の補助金を受領していたことが判明した場合は、交付決定日が遅い方の補助事業の交付決定が取り消され、補助金の返還が求められます。
その他、対象外となる事業者
上記以外にも、以下のような事業者は補助対象外となります。
- 応募申請時点で従業員数が0名の事業者
- 新規設立・創業後1年に満たない事業者(最低1期分の決算書の提出が必要)
- 直近過去3年間の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者
- 収益事業を行っていない法人、運営費の大半を公的機関から得ている法人、政治団体、宗教法人
- 虚偽の内容を申請した事業者
- 事業の主たる内容を他者に外注または委託する事業
- 不動産賃貸や駐車場経営、暗号資産のマイニングなど、実質的な労働を伴わない事業または専ら資産運用的性格の強い事業
- 1次産業(農業、林業、漁業)に取り組む事業(ただし、加工や料理提供など2次・3次産業分野は補助対象となる場合があります)
- 公序良俗に反する事業や法令に違反する恐れがある事業
- 同一事業者(みなし同一事業者を含む)による重複申請や、他の法人と同一または類似した内容の事業
- 国庫および公的制度からの二重受給となる事業。
補助金額と補助率は?
補助金額の上限と下限
補助金額は、申請する中小企業の従業員数によって上限が異なります。
- 従業員数20人以下: 750万円~2,500万円(賃上げ特例適用で3,000万円に引き上げ)
- 従業員数21~50人: 750万円~4,000万円(賃上げ特例適用で5,000万円に引き上げ)
- 従業員数51~100人: 750万円~5,500万円(賃上げ特例適用で7,000万円に引き上げ)
- 従業員数101人以上: 750万円~7,000万円(賃上げ特例適用で9,000万円に引き上げ)
補助率
本補助金の補助率は、一律1/2です。
まとめ
中小企業新事業進出促進補助金は、中小企業が新たな挑戦を通じて成長し、従業員の賃上げを実現するための強力な支援策です。本記事で解説した目的、対象者、補助金額・補助率の基本情報をしっかりと理解し、自社の事業計画がこの補助金の趣旨に合致するかどうかを確認しましょう。
補助金申請は複雑なプロセスを伴います。常に最新の公募要領や応募申請ガイドを熟読し、不明な点があれば、事務局や認定経営革新等支援機関に相談することをおすすめします。この補助金を活用し、貴社の新たな事業進出を成功させましょう。